通信紙

こちら“ちくま”

2000年第1号 通巻17号
 
 発行人 新井俊雄
 編集人 大下京子 宮沢敬子
 発行所 筑摩工芸研究所
 〒399-0001 長野県松本市宮田8-22
 tel. 0263-26-6330 fax. 0263-26-6047

このマークにぴーんときたら…
 
私たちの生活の中で必要な移動
 百瀬 倫子(スタッフ)
「ちくま共同作業所」では、およそ20名が仕事をしています。
 牧野 文子(スタッフ)
「NPO」のこと・2 ―知ってることは力になる・12―
 たていわ しんや(信州大学医療技術短期大学部助教授)


任期を終えるにあたり
ちくまの日記
編集後記







このマークに

  ぴーんときたら……

 1998年6月、「ちくま」にしては珍しい『チャリティー絵画展』を開催しました。その目的は、「ちくま移動サポート」開始に向けての資金確保でした。慣れない仕事で右往左往するスタッフを支えてくださったのは、いつも「ちくま」を陰でサポートしてくれるボランティアの方たちでした。勉強会や実際の準備をしていく中で、はたと気付いたことがありました。「ちくま」にある福祉車輌には名前が入っているのに、実際運行に携わるスタッフは私服でいいのだろうか? 今まで「ちくま」もいろんな仕事をしてきましたが、ユニフォームを作ったことはありませんでした。しかし今度の「移動サポート」という仕事は、見知らぬ人、「ちくま」を知らない人と会うことになります。スタッフであることが一目で分かるにはやはりユニフォームと、そこにマークを入れたい、ということになりでき上がったのがこのマークです。

 一見ハートのマークに見えるこのラインは道を表しています。その先の→は前に進んで行くことを表しています。私たちにできる具体的な提案としてはじめた「移動サポート」が、常に"前に"という姿勢でいられるように、また実際の運行でも常に前を見て(もちろん横も後ろも見ていますよ。実際は!)ということです。夏はベスト、冬はジャンパーとなり、その背中にこのマークが入りました。もう1ヶ所ベストは胸に、ジャンパーは袖に「ちくま」と入っているのですが、この字をよく見ると、車いすの人を介助している絵になっています。

 ボランティアの方が考えてくださったのですが、すごくよくできています。今後どこかで"このマークにぴーんときたら……"恥ずかしがらずにお声をかけてください。

戻る

私たちの生活の中で必要な移動

百瀬 倫子(スタッフ)

 「ちくま」では歩行困難な方、車椅子利用の方などの移動手段のひとつとして「移動サポート」の運行をしております。その移動(外出)はとても生活に密着したものです。なんら歩くのに障害のない方なら、移動するのにあまり不自由を感じることなく生活していますが、今回「リフト付き車両での移動」「移動介助」とは具体的にどんな事をしているのか,簡単に紹介したいと思います。

リフト付き車両 

 主に2つのタイプがあります。車椅子に乗ったまま車内に乗り込み、固定するものと、電動回転式座席に乗り移り、車椅子を車内に乗せるもの(電動車椅子を吊り上げるものもある)があります。「ちくま」では前者にあたる車両で「日産キャラバン」 「日産バネット」軽自動車の「三菱ミニキャブ」の3台で、利用する方の用途によって運行しております。

 車内後方部にあるコントローラーでリフトの操作をしますが、車種によってリフトの種類が異なり、手動操作が必用な部分があります。最近ではリフトアームが左右に付いたり、リフト面に乗ったままで車内に乗り込めるもの、コントローラーもリモコンになったりと、介助者にも安全に操作できるように改善されてきています。

 車種によって車内での車椅子の固定方法は異なります。前方横(A)、後ろ(B)それぞれ2ヶ所ずつ。シートベルト(C)。利用者の状態で車椅子と体を支えるベルト(D)。これらによって固定します。車内でより安全な状態を試行錯誤し、伸縮式ベルト(運送の荷物を固定するのによく使われている)、3点式シートベルトの装備、マジックテープ付きベルトを使用したりと、従来の固定装置にはない発想を取り入れています。

移動介助   

 車の乗降者にまつわる車椅子操作。入院、通院、買い物、行楽、会議先での付き添い(トイレ介助、食事介助、荷物持ち等)をいたします。運転だけではなく、臨機応変に対応しています。

 私もそうなのですが、文章ではなかなかイメージできない部分もあります。「ちくま」がある松本でも、病院、施設、バス、タクシーの福祉車両をよく見かけるようになりました。乗降されているのをちょっと遠目でみると「なるほど」と実感が沸くかもしれません。「ちくま」の車であれば駆け寄ってきてみてください。これから20年先には、高齢者は4人に1人といわれる時代になるそうです。これから益々,車椅子での「移動」を必要とされる方が増える時に、様々な手段でより快適に生活を楽しめるものであればと思いながら、車を走らせています。


戻る


「ちくま共同作業所」では、およそ20名が仕事をしています。

牧野 文子

 作業の内容はアスパック(発砲スチロールのスパゲティ状の物)の袋詰や、石けんの包装などです。以前は、各地のお土産物の組み立てなどもしていましたが、作業工程が比較的難しかったために、できる人とできない人が出てきてしまいました。しかし、現在のこの仕事は比較的簡単な作業なので、みんなで会話をしながら楽しい雰囲気で作業を進めています。

 年に何回か、養護学校の生徒さんが職場実習を行っていますが、その生徒さんたちもすぐに作業に取り組めています。そして"また来たい"という感想を残し、実習を終えられています。私もその言葉を聞きとてもうれしく思っています。

 2,3年前までは来る仕事の量も多く、納期までに間に合わせるのに、休み時間返上で仕事をすることもありました。でも最近は不況の折、来る仕事の量が減り休憩時間を長く取っています。以前は確かに忙しく大変な思いをしたのですが、何かしら充実感があり、みんなも生き生きとしていたような気がします。それに比べ現在は、少し物足りなさを感じています。

 作業所で働きたいと希望する人もいます。しかし作業が足りないため、その希望を叶えられずとても残念です。そのために何か仕事を増やそうと思い、心当たりをいくつかあたってはいるのですが、どうも仕事はないようです。  今日もK君は、鼻歌を歌いながら上機嫌でアスパックの密封の仕事をしています。このような作業の時間を増やしていくためにも、もう2,3種類の仕事が欲しいと思います。「ちくま」でできる仕事がありましたらご紹介ください。


戻る


「NPO」のこと・2
知ってることは力になる −12−

たていわ しんや(
信州大学医療技術短期大学部助教授)


 この手をこれまでも何度か使っていますが、まずは弘文堂の『福祉社会事典』(1998年)から、私が担当した「NPO、[英]Nonprofit Organization」の項目の引用です。

 「非営利組織の略称。有料のサービスを行う組織であっても、利益を活動のために用い私的に分配しないならNPOである。非政府組織(NGO)と呼ばれるものも非営利組織で、また政府組織をNPOと呼ぶこともないから、その限りで両者は同じだが、NGOは海外協力を行う組織を指し、NPOはより広い意味で用いられることが多い。

 財団・社団法人、学校・宗教・社会福祉法人等の公益法人もNPOだが、1990年代初頭にこの言葉が日本で使われ始めたのは、米国のNPOの活動の多様さ活発さ、法人格取得の容易さや税制面での優遇等の社会的支援システムの充実度が注目され、日本でも従来の公益法人以外の民間組織の活動を評価し、その活動をより活発なものにしようと意図されたからだった。さらに、1995年の阪神・淡路大震災の際のNPOの活動への評価、注目がこうした気運を高めた。

 法人格をもたない任意団体では、団体としての契約や不動産登記ができない、社会的信用が得にくい等の問題があり、公益法人制度では、組織の永続性を担保するためとして資産の保有が求められる等、設立時に主務官庁による認可が必要で、設立後も監督・指導が行われ、自由な活動がしづらい。そこで新たな法律制定のための検討が進められ、1998年3月に「特定非営利活動促進法」、いわゆるNPO法が成立、税制面での優遇措置については見送られるなど課題を残したが、NPOの法人格取得が以前より容易になった。」

 第二段落までは前回説明しました。つまりここまでは繰り返しです。すみません。第三段落は「特定非営利活動法人」いわゆる「NPO法人」のごくごく簡単な説明になっています。この法律ができるまでの紆余曲折はなかなかおもしろいのです。例えば、法人格の取得や法人の活動の監視に関わる行政側の権限を確保しようという側(オウム真理教が宗教法人だったこと、それに対する行政の監督が問われたこともこれに絡みました)と、あくまで民間の側の自由度を確保しようと、法人格の取得にあたっては登記所への「登記」と役所への「届け出」でよしとし、活動の評価・監視は市民への情報公開で対応すべきだとする側との対立など。結局、「認可」よりは行政による縛りの緩い、都道府県による「認証」ということになりました。

 その認証のための諸手続きは、随時、長野県内なら長野県庁で受け付けられています。法律に規定される条件を満たさないとか、書類が不備だったりすると認証されないことになりますが、少なくとも今までの法人(財団法人とか社会福祉法人とか)よりは面倒ではありません。詳しくは各都道府県の窓口まで、ということになりますが、行政の側もまだそう慣れているわけではないので、そんなことも含めてある程度の手間がかかるようです。民間の側では長野市に事務局がある「長野県NPOセンター」(ここ自体が特定非営利活動法人です、tel:(026)269-0015 fax:(026)269-0016、 Email:npo@green.interq.or.jp)が情報提供等の支援活動を行なっています。

 長野県内では2000年1月現在で、特定非営利活動法人=NPO法人の数が26団体(申請中含む)、そのうち11団体が高齢者介護に関わる団体だそうで(長野県NPOセンターによる)、この3月から始まる「介護保険」の事業をしようというところが多いようです。

 さてこの法人格をとった方がよいのか。微妙なところです。具体的な利益はそうない。が、お金が関係する組織はとっておいた方がよい。仕事の委託を行政から受けようとするところも考えておいた方よい。そんなところでしょうか。たいがいの民間団体にとっては何億円の基金を積んでその運用益で活動する「財団法人」なんて夢のような話ですし、「社会福祉法人」も(徐々に条件は緩和されつつありますし、数年後にはこの法人のことを定めた「社会福祉事業法」も改訂されるでしょうが、少なくとも今のところ)取得しにくいし、活動が制約されることにもなる。法人格があった方がよいという団体にとっては、考えるだけのことはあるだろうと思います。

 法人格があれば、その法人が契約主体になることができます。賃貸の契約を結ぶにせよ、口座を開設するにせよ、人件費を払うにせよ、代表者等の個人名で行なっていたものを法人名で行なうことができます。これはメリットではあります。また、今後は、行政が委託する事業を受託して行なう場合に、この法人格があった方が便利ということになるかもしれません──これは行政側のNPO法人に関する知識、NPO法人に対する態度いかんの部分がありますが。

 今後の課題とされていることの一つは、税金、あるいは寄付金の扱いです。つまり、NPO法人に対する税金面での軽減措置、NPO法人に寄付した場合の寄付した人に対する、やはり税金の軽減をどうするか。日本人はあまり寄付をしない国民です。それに対して、例えば米国の場合、1989年の個人所得のうち平均2.19%が寄付にまわされ、75%の世帯が年間平均 978ドルを寄付しているのだそうです。米国では寄付をするとそれに応じて税金が安くなります。日本にもそういう制度がないことはないのですが、非常に限られた範囲のものです。日本でも寄付税制を変えると、民間の活動に対する寄付が活発化する。かどうか?税金・寄付金の部分が変わるとNPO法人になる魅力が増える。かどうか?

 ただ、前回にも書きましたように、「NPO」=「NPO法人」ではありません。NPOの中で、今回の法律に規定された法人格を取得したのがいわゆる「NPO法人」、正式には「特定非営利活動法人」なのです。法人格があろうがなかろうがNPOの活動はもっと着目されてよいと思いますし、また組織の側でも運営の上でいろいろと工夫してみたらよいことがあると思います。米国のNPOのおもしろさはそういうところにもあります。今回少しふれた寄付や財源の問題もあわせて、次回に見ていこうと思います。

 *『NPOが変える!?──非営利組織の社会学』という千葉大学の学生の調査報告書があります。私が松本に来てから完成させ1996年発行、と盛られたデータは少し古いものですが、なかなかおもしろいものになっていると思います。今回(以降)に関係するところでは、第1章「アメリカのNPO活動と日本の市民活動」、第3章「人を用いる──アメリカのNPOはどうしているか」、第4章「どのようにお金の流れをつくるか」等。合わせてお読みいただければさいわいです。ただ、1000部印刷 したのですが好評をいただき、もう売切れています。ホームページ(http://itass01.shinshu-u.ac.jp/tateiwa/1.htmあるいはhttp://health.shinshu-u.ac.jp/tateiwa/1.htm)に全文を掲載しますので、ご覧ください(最初の頁→「NPO(非営利組織)」等で見られます。)。

戻る



人を観る

新井 俊雄 著

 いつ頃感じたのか
 この世に
  すとんと
  生れおちた
   そんな感じで
   生きてきた
 気が付くと
  人間の中にあった
  小さい子供の
    中にあった

「ちくま」代表の新井俊雄が本を出版しました。

ご注文に付きましては、書店または筑摩工芸研究所にお問い合わせください。

発行所:ほんの木
定価:本体1,600+税



任期を終えるにあたり

一年間ボランティア 甘利紀子 

 この2月末に東京で行なわれる総括研修を以って、一年間ボランティアとしての任期を終えることになりました。

 この一年間、どれをとってみても初めての経験のなかで、ご迷惑をおかけすることばかりでしたが、とても良い経験ができました。  ちくまには、今まで知らなかった世界がありました。心温かいスタッフの皆さんに囲まれ、おもしろい人たちの集まる、とても魅力的なところでした。この中に身をおくことで、今までの価値観が少し変化したように思います。

 総括研修から戻り、3月末まではお世話になる予定です。ちくまの空気を存分に吸ってから帰りたいと思っています。最後になりましたが、この一年間関わったすべての方にお礼を言いたいと思います。いろいろお世話になり、ありがとうございました。

戻る


ちくまの日記


12月8日

ホームページを見てメールをくださったNさん来所。

10日

民タイムス、移動サポートについて取材。

14日

「ちくまの店」新装開店に向け設計打ち合せ。

28日

仕事納め。

1月11日

仕事始め。
福祉関係へ就職希望のHさん、「ちくま」で体験実習開始。

14日

情報紙「えなじー」の平野篤さん、取材のため来所。

24日

庭のプレハブ作り始まる。作業所の製品置き場になります。

26日

ナワテ商店街新年会に瀧澤出席。

恒例春の味覚(ちくまのびっくり箱)甘夏・はっさく3月入荷。ご予約承り中。

戻る

〔編集後記〕
 
編集人が増えると幅が広がります。今後、外から原稿をいただく機会ももっと増やせたらと思います。(京)

  インターネットをいかがお使いですか?便利さがわかってきましたが、メールを送ったのに届かないこともしばしばあるビギナーです。「今送ったけれど届かなかったら電話ください……?」難儀しています。(み)


支援会員 年間 2,000円

賛助会員 年間 5,000円


移動サポート賛助会員

 (個人)年間 5,000円

 (企業)年間 10,000円

各会員の方には『こちら“ちくま”』やさまざまなご案内をお送りします。

郵便振替口座a@00520−6−22266
口 座 名 義 筑摩工芸研究所

戻る

<ちくまトップページへ>