あしなが育英会とは、病気や災害、自死(自殺)で親を亡くした子どもたちを物心両面で支える民間非営利団体です。

2001年10月26日

自死遺児学生有志による「自殺防止の提言」

埼玉県に住む男子大学3年生(20)

 3年連続で3万人もの人が自殺しています。私自身も自殺で父親を亡くしました。借金を抱え、自殺していきました。私はどんなことがあっても生きていてほしかった、どんなに苦しい生活でも一緒に暮らしていきたかったと思っています。自死遺児たちは共通の痛みを持っています。なぜ止められなかったのか。なぜ辛いなら話してくれなかったのか。捨てられてしまったのではないのか。社会の偏見もあり、辛い思いを抱えたまま生きています。
  今もし自殺を考えているお父さんやお母さんがいたら聞いてください。今は確かに辛いかもしれません。今、希望は見えないかもしれません。それでもあなたを思う家族がいるから、絶対に死なないでほしいと思います。お父さんや、お母さんに死なないでほしかったと思う自死遺児がいるから、絶対に死なないでほしいと思っています。自殺したいと追い込まれる人もいりません。家族を自殺で亡くし苦しむ遺族、自死遺児はこれ以上もういりません。
 しかし現実には「自殺してしまいたい」と追い込まれてしまう人たちがいます。借金を抱えて悩む人。うつ病におちいり、苦しむ人。生きる気力を無くして落ち込む人たちがいます。この問題は決して個人の問題ではありません。社会で考える問題だと思います。多くの人に考えてもらいたいと思っています。自殺しないでもすむ社会を作ってほしいと思います。

東京都に住む男子大学3年生(20)

 私は中学一年の時に父親を自死で亡くしました。私が小学校6年の時の冬から私の父親は仕事もせず寝たきりの状態でご飯の時ぐらいにしか姿を見ることはありませんでした。そんな状態がしばらく続き、中学校にあがって間もない夏のある日、私の父親は自宅で首をつって自殺しました。家に借金があったということを知ったのは父の亡くなった後のことです。
私の中学生の時代・高校生の時代は誰にも父親の死を話す事の出来ない期間でした。学校の友達に「お父さん何しているの?」と聞かれてもごまかしてしまったり、うそをついたりしていました。父親が自殺で亡くなったということを話したらみんなに遠ざけられてしまうのではないか、自分は、みんなとは違うということを認めてしまうのが嫌でした。
 高校2年の時、母親が病気にかかり入院する事になりました。母親は手術もし、そんな母親の姿を見ているのがとても辛かったです。父親さえ自殺をしなければ母親もこんな辛い思いをしなくてもよかったのに…いつしか父親に対して恨みに近い感情さえ持つようになっていました。
私は、あしなが育英会が毎年夏に行なっている「つどい」に参加することではじめて他人に自分の父親が自殺によって亡くなった事を話すことが出来ました。初めて私と同じく自殺で父親を亡くした人に出会い、「人に父親のことを話してもいいんだ」と思いました。父親を亡くして以来、考えようとしなかった父親の事と向き合う事が出来ました。
今思うことは、父親がうつ病の状態にいる時に私がもっと父親の話を聞いてあげる事が出来たら、もっと、父親が辛い思いを語ることの出来る場が周りににあったら父親の自殺は防ぐことが出来たのではないかということです。うつ病と言う病気は誰にでもかかりうる病気です。うつ病になってしまうことが問題なのではなく、うつ病を直していこうという体制を整えていくことが大切だと思います。
そして、私自身の人に話を聞いてもらうことで父親の死と向き合うことが出来たという経験を通して、私以外の自死遺児でも、自分の身近な人を自死で亡くすという体験を、人に話すことで親の死と向き合い、少しでも前向きに生きていって欲しいです。自死遺児または自死遺族には彼らの体験を聞いてあげられる場所が必要だと思います。

◇ 自殺統計の早期発表と実態調査の実施
 年間3万人もの人たちが自殺しているこの社会を考えてください。そのためにも自殺の現状を常に公開してほしいと思います。自殺統計の早期発表と、実態調査を実施する必要があります。そして情報提供と早期対策をが必要です。

◇ 自殺防止のセーフティネットの確立を
 追い詰められ自殺していった人たちには、苦しみを受け止めてくれる場がありません。そして追い詰められたらもう自殺しか見えてきません。苦しんでいる人たちの苦しみを受け止め、問題解決のため弁護士、税理士、行政の担当者などが総合的に相談にのるセーフティネットと、今までは絶望してしまうような状況でも生きる気力の持てるような社会システムのセーフティネットが必要です。自殺しなくてもいい社会を。

◇すべての医療機関で、うつ病の早期発見と連携を
 かかりつけの医者や、会社内にいる医者が、より早くうつ病を見抜き、精神科医と連携する事で、うつ病を早くから発見し治療できる体制が必要です。

◇残された家族の心のケアを
 全国12万人いる自死遺児の多くが親を自殺で亡くした体験を他人に語る事が出来ず につらい思いをしています。彼らの思いを受け止めてあげられる場が必要です。



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